2016年8月24日水曜日

残留オーステナイト 測定はできません。続き

X線での残留オーステナイト測定では解決できない問題がありサービスを提供していません。
  1. 集合組織の影響が考慮できない。
  2. バックグラウンドノイズの影響を把握できない。
  3. X線の到達範囲の表面の測定で妥当かの判断ができない。


現状でこれをすべて解決すると思われる装置は、茨城県の材料構造解析装置iMATERIAで、
  1. 集合組織と残留オーステナイトの迅速測定が同時にできます。
  2. 十分強度のある中性子を使うのでバックグラウンドノイズの影響も少ないし材料全体の測定ができます。
  3. X線では2個のピークから残留オーステナイトを計算しますが、iMATERIAは、15個のピークで計算しますので高精度です。
手間と時間はかかりますが、試料をまとめると思ったほど高くないのご検討されてはいかがでしょうか。

2016年8月18日木曜日

美味しいウィスキーが飲めればいい。

 2次元検出器によるX線応力測定 日本保全学会編を読んでいて思った。


 X線回折を利用して応力を測定する方法は、従来からのsin2ψ法と新しく2次元検出器によりメジャーになりつつあるcosα法があり、その優劣についても議論されている。

 その議論を見ていて思い出されるのはモルトウィスキーとグレーンウィスキーの論争である。それまでウィスキーといえば大麦でつくったモルトウィスキーでしたが、連続式蒸留器の発明によりトウモロコシ等別の材料でもウィスキーを作ることができるようになりました。グレーン・ウイスキーはまがい物であるとするモルト・ウイスキー業者とグレン・ウイスキー業者の間でずっと論争が続いていました。裁判にもなりました。でもそのうちに論争は下火になりました。なぜか、モルトとグレーンをブレンドしたブレンドウイスキーがでてきてそれが美味しかったからです。
 
 当社のような様々な対象を測定するユーザーとしてみれば、ハイブリッドで両方のいいとこ取りができないか考えている今日この頃です。
 


2016年8月1日月曜日

仮想測定例 溶接構造物 SUS304

この事例は、仮想的なもので実際とは相違します。
  1. 材質SUS304
  2. 定期的にホットスポットにΔσ 100MPaの圧縮応力がかかる構造物。
  3. 繰り返し荷重が 200万回を超えたくらいから疲労亀裂が止端部に発生した。
  4. 継手の形状は面外ガセット
解説
  1. 止端部は、溶接の引張応力が最大になりさらに応力が集中する形状になっているのでキレツが発生しやすい。
  2. 鋼構造物の疲労設計指針・同解説によると面外ガセット(非仕上げ)の疲労強度は、Δσ 50MPaであり、これをΔσ 100MPa程度に向上させる必要があった。
  3. ピーニングを選択し、ピーニング前後の止端近傍の応力を測定した。ピーニング前は、最大300MPa程度の引張、ピーニング後は最大500MPa程度の圧縮となった。また、荷重のあるなしでも測定した。止端近傍では、2倍程度の応力集中が測定された。
  4. したがって、ピーニング前は、平均応力が引張200MPaでΔσ 200MPa相当の応力がかかっていたと推定され、ピーニング後は、平均応力が圧縮400MPa相当になったと推定されピーニングの効果が検証された。
  5. ピーニング後は最大500MPa程度の圧縮は加工効果によりものと推定される。

オーステナイト系ステンレスSUS304をCr管球で測定する際の注意点

オーステナイト系ステンレスSUS304をCr管球で測定する際の注意点

  1. フェライト等のKα線を使用する場合に比べてオーステナイトは、Kβ線を使うのでX線強度が1/10になります。ノイズやバックグランドの影響を受けやすく誤差が大きくなります。
  2. 加工誘起変態で一部がマルテンサイト化するのでマルテンサイトとオーステナイトの回折ピークが並立して応力の計算がうまくできない、誤差が大きい場合があります。
  3. SUS304は、加工硬化によりかなり硬くなります。そのため測定された応力値が0.2%耐力より大きな数字が出る場合があり、測定の信頼性を疑われる場合があります。
  4. フェライトより回折角が小さいので回折環が開いた状態になりより測定面と近づける必要があります。継手の形状によっては、溶接部分の応力測定が困難な場合があります。
 したがって現場測定の場合は、同じ材料で同様に作成した簡易構造試験体(継手の形状はできるだけ同じ)でお試しの測定をしてから、測定の可否、精度を確認してください。

SUS304構造体の応力測定例

SUS304は、加工硬化が著しい材料ですのでピーニングの圧縮応力はかなり高くなる場合があります。