2015年11月28日土曜日

お客様からの質問の回答の中からX線回折について解説します。

SUS630は測定できますかとの質問がありました。
 X線による応力測定は、実際には結晶のひずみ(変形)を測定しています。しかも、原子間レベル(オングストローム)でです。
 このレベルになると鉄は2種類しかありません。フェライト(BCC)とオーステナイト(FCC)です。結晶のかどっこに原子がある体心立方晶と面の真ん中に原子がある面心立方晶です。マルテンサイトは、BCCにCカーボンが入ったもので、フェライトと同じに扱えます。以下のような鋼種は、基本的に同じ設定、定数で測定ができるのです。

   構造用炭素鋼(SS,SB,SM,S-Cなど)
構造用合金鋼(SCr,SCM,SNC,SNCM,SMA,SPAなど)
構造用低金属高張力鋼
低合金耐熱鋼(STBAなど)
軸受鋼(SUJ)
ばね鋼(SUP)
工具鋼(SK,SKS,SKD,SKH,SKTなど)
鋳鍛鋼(SC,SCMn,SCMnCr,SF,SCH1,SCH2,SCH3など)
フェライト系マルテンサイト系ステンレス(SUS430,SUS403)
析出硬化型ステンレス鋼(SUS630,SUS631)
フェライト系、マルテンサイト系耐熱鋼(SUH21,SUH446,SUH1,SUH4,SUH600,SUH616)

これが私がX線応力測定を好きな理由な一つです。

 Simplify and Optimize 
 XRSMC

2015年11月23日月曜日

X線をつかった応力測定の精度に関して

繰返し誤差

私の経験の範囲での話ですが、繰返し誤差は、

  • 0応力サンプルが ±15MPa
  • -500MPa程度の標準サンプルが ±50MPa
  • 実際の測定 慎重に作られた試験体が ±50MPa

以上のようなレベルです。

±50MPaは、大きいのでしょうか?

歪みを計算してみましょう。鋼のヤング率は200GPa程度なので、歪み0.001つまり0.1%の伸縮で200MPaの応力です。つまり、±50MPaは、4000分の1の歪みを正確に測定しているということです。したがってさらに精度を上げることは結構難しいのです。